大学教授が斬る! 2ch検証スレ『崖の上のポニョが神過ぎた件』のYes or No!【ネタバレ注意】

2010年5月24日 記事の公開日時 7:32 am

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大学教授が斬る! 2ch検証スレ『崖の上のポニョが神過ぎた件』のYes or No!【ネタバレ注意】
 
 
『崖の上のポニョが神過ぎた件』-ハムスター速報

『崖の上のポニョが神過ぎた件』-ハムスター速報

08年に公開されたスタジオジブリ宮崎駿監督最新作品『崖の上のポニョ』。一見少々子供向けのように見えるこの映画だが、2ch上で繰り広げられた考察が話題を呼んだ。その名も、『崖の上のポニョが神過ぎた件』-ハムスター速報。

そこにはエントリー主の独断と偏見による、深読みとも取れる壮絶なポニョ解釈が展開されている。ぜひこの真偽を確かめたい! ということで、早稲田大学文化構想学部で『物語論と解釈学の系譜』という授業を担当している高田明典教授に話を伺った。

[検証]”3”という数字が作中のキーとなっている?

<検証スレ>『崖の上のポニョ』では「3」という数字が作中のキーとなっている。「3」は『アセンデッドマスター(超越した人間とその霊魂)』を示す天使の数字であり、作中には多くの「3」が登場する。

  • ポニョの睡眠の回数が3回(①)。死のモチーフは眠ること。つまり、睡眠=輪廻を指す。フジモトが「ポニョが寝てくれれば…」と気にかけているのも、転生の魔法を成功させるため。
  • グランマンマーレの3つの質問に対する宗介の3回の返答(②)。
  • リサカーのナンバープレートが『333』(③)。


  • 3回が云々だとか、「3」という数字が意味があるっていうのはどうかなって思う。

    「3」は物語や民話ではよく使われてて、3回繰り返されるのは別に神話的な意味があるからじゃなくて、2じゃ少ないし、4が多いからなんだよね。例えば『白雪姫』も3回魔女に殺されそうになるシーンがあって、それは2回同じことを繰り返した後に3回目で覆るって展開が、物語上最も気持ちがいいから。

    ただ、いいとこを指摘してるのは確かで、ストーリーの折り返し地点としての象徴的な眠りは3回だったね。

    [検証]大洪水後の世界は「死後の世界」?

    <検証スレ>劇中で描かれている、大洪水後の世界は、実は「死後の世界」だった。

  • 「クラゲドーム」「山の上のホテル」(④)は「グループソウル」という、人が集団で生まれ変わる魂のグループを指す。老人達が元気に走り回り、肉体的苦痛から解き放たれているのは天国だから。
  • 小舟の一家がいたのは三途の川(⑤)。一家は、大正時代の身なりをしている。つまり、異なる時間軸が重なってしまっており、それはこの世ではないから。
  • トンネル=別世界への通路。トンネルは「あの世」「女性器」のメタファーであり、トンネルを抜けた先はこの世ではない。ちなみに劇中のトンネルの横には、子どもの魂を救済すると言われるお地蔵様が描かれている(⑥)。


  • この図を参照して欲しいんだけど、これは「死」の側にいる人間が、「生」の側へ移動する物語なわけ。

    ただ、死のモチーフが強すぎて、死に強く引かれてしまうのは確かだね。どのようなものでも『二項対立』の概念って不可欠で、「生の充溢」を表現したかったら、それだけ「死」の描写も濃くしないといけない。宮崎駿はそのイメージ作りが非常に上手い人なんだよね。

    例えば、冒頭の宗介はポニョとの遭遇時に「死んじゃったのかな?」って言葉を不自然なほど繰り返しているでしょ? 最後のクラゲドームでも「ここは天国じゃない?」って台詞が入る。

    あとは色。フジモトは最初に青と白のマントを着ていて(⑦)、それが最後には赤と白のマントに替わってる(⑧)。青は知恵と死の色で、赤は生と愛の色だからね。リサとトキの服も青。
    もう一つ「死」の象徴としては、「不在」。

    お父さんが話から消える、もぬけの空になったリサの車、置き捨てられた車いす(⑨)、これは全部「不在」を表していて、「不在」は強く死を連想させる。

    それら全てを宮崎駿はわかった上で手法として使っているの。これで、「あれが全部死後の世界でした」じゃ、なんて救いのない話なんだってなるでしょ(笑)。

    [検証]ポニョは実は「死神」だった?

  • ポニョの本名は「ブリュンヒルデ」(⑩)。北欧神話のワルキューレの長姉の名前であり、ワルキューレは「死者を天上に連れていく」存在。ポニョがキスをすることにより、小舟の一家の赤ん坊(実は地縛霊)は成仏して天国へ行き、トキ(⑪)はクラゲドーム(⑫)へ行くことになった。


  • 確かに、ブリュンヒルデ、ワルキューレの神話はあるね。だからといってポニョが死神かと言ったらそれは違う。

    ただ、ポニョにキスをされる人間が救われるって意味ではその通り。それは神話的な構成じゃなくて、ポニョが持っている『絆と愛』っていうものによって、「死と知恵」の側にいる人間が「生と愛」の側に移行してるってことなんだよね。

    こういうのはさ、宮崎駿のサービス。宮崎作品のリドルは賢くてさ、読者にこういう議論をさせる為に、全部じゃないけどこういうヒントを作中にちりばめることが多いの。

    [検証]久石譲さんの公式コメント

    宮崎作品の全音楽を担当する作曲家の久石譲さんによる公式コメント。

  • 「死後の世界、輪廻・魂の不滅など哲学的なテーマを投げかけている。でも、子供の目からは、冒険物語の一部として、自然に受け入れられる。この二重構造をどう音楽で表現するか。そこからが大変でした」これはポニョの世界観を示唆しているもの暗に示唆している。

  • 「生と死の物語」っていう意味では、このとらえ方は全く間違ってない。ただ、直接的には「輪廻」や「魂の不滅」を扱ってるわけでもなくて、同じ方向を向いているって感じかな。

    死後の世界とか輪廻とか魂の不滅なんてのも、基本的には「生と死の対立」をどうやって我々が消化しようとしてきたかの歴史でしょ? 多分死んじゃったら無になるんだけど、それが人間にとっては受け入れがたいことで、輪廻であったり魂の不滅であったりっていう、方便を使って生きてこうとするわけじゃん。その同じ延長上にこういった物語がありますよってね。


    こちらもあわせてご覧下さい。

    ネタバレ注意! 崖の上のポニョから学ぶ解釈学のススメ!


    <検証サイトのご紹介>
    崖の上のポニョが神過ぎた件-ハムスター速報
    崖の上のポニョの解釈(12歳以上向け)

    高田明典 プロフィール

    フェリス女学院大学文学部コミュニケーション学科教授。現代思想やメディア論を専門とする。


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