【2010秋号】伝統の発明!? 知られざる大相撲の歴史を暴け!

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2010年9月29日 記事の公開日時 4:54 pm

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【2010秋号】伝統の発明!? 知られざる大相撲の歴史を暴け!
 
 
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品格、品格と言うけれど…

MAG!2010秋号-伝統の発明!? 知られざる大相撲の歴史を暴け!

大相撲。力士同士が繰り広げる激しいぶつかり合いと大迫力の技の数々で観る者を魅了する、日本が世界に誇る伝統文化である。そんな伝統ある大相撲で、近年よく耳にするようになったのが力士の”品格”や”格式”といった声。国技なのだから神経質に騒がれるのも仕方ないのかなと思う半面、じゃあ実際のところ相撲の”伝統”や”しきたり”ってどのように形作られてきたの? と、疑問に思ったMAG!特捜部は、早稲田大学で相撲の歴史を研究されている、リー・トンプソン教授(なんとアメリカ人!)にお話を伺ってきた。

「そもそも相撲の歴史はすごく曖昧で、何をもって相撲を定義するかということによって異なります。ただ、観客に観せる”Show”としての相撲になったのは、江戸時代中期からですね。」(トンプソン教授)

現在のような格式高い”神事”として相撲がみられるようになったのはごく最近で、昔は品の悪い人間が飛び入りで参加してしまったりなどもあったそう。また、相撲は興行に伴って喧嘩や賭博の対象になることが多く、江戸幕府から何度も興行停止処分を受けているらしい。
そのような問題の解決や、興行として洗練させるために相撲も様々な変化を取り入れてきたのだと教授は言う。

「大相撲は他のスポーツ同様、明らかに近代化の過程を辿っています。顕著な例が”優勝制度”ですね。本来、大相撲では優勝という取り決めがなかったのが、新聞社が場所を通じて一番成績の良かった力士を表彰するために優勝制度ができたんです。」(同)

意外に思うかもしれないが、”横綱”と呼ばれる力士が登場するのは明治32年、つまり横綱制度ができてからもまだ100年程しか経過してないというから驚きだ。

「スポーツの近代化というのは、記録を追及するとか空間と時間が数量化されていくことを言います。現代ではその記録やデータに関心が集まることが多いのですね。ただ、相撲はその近代化と同時に、伝統化とも呼べる道も辿ってきています。」(同)

相撲は近代化を進める一方で、いわば伝統の継ぎ足しのようなものが行われてきている。一見、相撲の全てが古風で神聖なものとして思われがちだが、時代に合わせた修正と、新しく取り入れた制度をあたかも伝統的にみせることで、”伝統を発明”するというアンビバレントな側面が確かに存在するのだ。

「上手を切りにいっている!」とか「腕(かいな)を返す!」という、日本の若い世代にもなじみのうすい言葉が飛び交う両国国技館。食わず嫌いならぬ、観ず嫌いになってしまっている人も多くいるだろう。トンプソン教授いわく、「相撲は技がわかってくると面白い」とのこと。アメリカ人の教授がこう言っているのだ、日本人たる僕達も、ものは試しだと思って一度相撲に触れてみてはいかがだろうか?

(文=海野陽太)

リー・トンプソン (Lee Thompson) プロフィール

早稲田大学スポーツ科学部学術院教授。
社会学 学術博士
大相撲を中心としたスポーツ社会学を研究する。

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