『京騒戯画』松本理恵監督、関弘美プロデューサーにインタビュー
「今日を騒がしく戯れ生きる人々の漫画映画を作った人たちの話を聞こう」(前編)

2014年3月21日 記事の公開日時 6:00 pm

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<br>『京騒戯画』松本理恵監督、関弘美プロデューサーにインタビュー </br> 「今日を騒がしく戯れ生きる人々の漫画映画を作った人たちの話を聞こう」(前編)
 
 

時間が止まり、壊れたものは直ってしまう不思議な都「鏡都」。そこに暮らすある一家の愛と再生の物語を描いた『京騒戯画』。
『京騒戯画』は、2011年にWEBアニメとして配信され、シリーズ合計100万回の再生を記録し、そして昨年の2013年10月から満を持して、TVアニメとして放送された。

今回は、25歳という若さでアニメ監督に大抜擢され、『京騒戯画』の世界を作った松本理恵監督と、関弘美プロデューサーにお話を伺った。

―『京騒戯画』はWEBアニメから始まり、昨年(2013年)の10月からTVアニメとして放送が始まりました。TVアニメの放送も終了し、一つの家族の物語として大団円を迎えての、今のお気持ちをお聞かせ下さい。

松本理恵監督(以降、松本監督)

終わりがいつか分からないと言われているときから、WEBアニメの制作が始まっていたので、ちゃんと終われて良かったです。

関弘美プロデューサー(以降、関プロデューサー)

そうですね。最初の立ち上げは、私ではない若いプロデューサーでしたので、そのときは本当にどこへ向かうのか分からない状態で始まりました。TVアニメを彼女(松本監督)と伴に、一つの区切りという形で終われたのは、本当に良かったと思います。

―初のTVシリーズを監督するにあたり、気をつけたこと、挑戦しようとしたことは何かありますか?

松本監督

作品の中で何かやるということよりも、無事に10話作りきれるかというところが一番大きかったです。途中で監督をクビになったりもしますから。

―『京騒戯画』は、東映アニメーションが制作しました『空中ブランコ』(2009年放送)以来の深夜アニメとなります。制作スタッフの中で緊張感やプレッシャーはありましたか?

関プロデューサー

『空中ブランコ』は、フジテレビさんのノイタミナ枠として制作されました。今回の場合も同様にスポンサーであるバンプレストさんの依頼のもとに制作されたので、大きな緊張感などはありませんでした。
深夜枠のアニメは、監督のセンスや能力を十分に活かし、そして監督自身が納得できる形で作られていくものだと思っています。ですので、その点を考えて作っていくということには、ある種の緊張感がありました。

―なるほど。

関プロデューサー

通常、東映アニメーションのTVシリーズ制作は、短くても一年はかかります。その一年間は結構大変で、マラソンに近いようなところがあるんです。彼女はテレビシリーズの総指揮をとるような経験が無かったので、少しでも彼女が納得できる形になれば良いな、ということを考えていました。

松本理恵監督
「京騒戯画は「今」を生きている子が、大人を「今」に連れ戻す話。」

―『京騒戯画』は、日本神話やおとぎ話を混ぜたような独特な世界観で構成されています。このような世界観を思いついた経緯を教えて下さい。

松本監督

制作の最初の段階で、バンプレストさんから「女の子が主人公で、武器を持ってるということ以外は好きに設定していただいて構いません」という話をいただきました。なので、とりあえず自分の好きなものを組み合わせるところから始まりました。
TVアニメ制作の過程で追加しようと考えた要素も入れたりして、『京騒戯画』の世界は自然と形作られていきました。

―個人的におすすめのシーンや、こだわったシーンはありますか?

松本監督

二話が個人的には気に入っていますね。基本的には必死でやっているので、どのシーンも印象に残っていますが、あえて挙げるとしたら、二話のBパートは特に印象に残っているかなという感じです。

―色彩や背景について、美術監督や色彩設計と、どのように調整し仕上げたのでしょうか?

松本監督

色彩設計の秋元由紀さんは、私が東映アニメーションに入社したときからずっと仕事を一緒にやってくれている方で、世代も近いこともあって、ツーカー的な感覚で話せるんです。基本的に私は注文するとき、抽象的なイメージ表現を多用します。
例えば、一話のCパート。夕方、明恵が彼女さんの部屋で寝ているシーンがあります。そのシーンの夕焼けは夕景だからただオレンジ色ではないんです。その時の明恵はまだお母さんのお腹の中にいるみたいな状態を表現したかったので、注文の際には、ただの夕景でもこの部分を特に意識して色彩を考えて欲しいという話をしました。お腹の中と言われても人それぞれイメージするものは違うのですが。
秋元さんは抽象的なところから、私が全面に押し出したいものをぴったりとチョイスするのがすごい達者な方なんです。なので、私からは大体そういうブワーっとした(抽象的な)注文を最初にして、秋元さんがそこからいくつかのパターンを作って、それを見ながら調整しました。

―「三人議会」は、とりわけ独特な空間として描かれています。

松本監督

WEBアニメで「三人議会」の話は作る際に私が絵コンテを担当して、そのときの絵コンテがイメージボード代わりになっていたんですよ。きっちりと打ち合わせをしたというよりも、絵コンテに合わせて周りの人たちにすり合わせて貰ったという感じです。

―主人公の「コト」を描き上げる上で気をつけた点は?

松本監督

何かをしっかりと気をつけて描いたという訳ではないですが、「コト」については主人公なので、自分の理想の主人公として描いてたんですね。なので「ブレない」という言い方はちょっとおかしいかもしれないですけれど、理想を妥協しないように描くというか。そこは気をつけていました。

―「コト」の印象的なシーンとして「私は先にしかないの」と、「明恵」に向かって泣いたシーンがあります。このシーンも、「コト」を描く上で重要な点に感じました。

松本監督

そうですね。『京騒戯画』はざっくり言うと、「今」を生きている子が、「過去」とか「未来」ばっかり見ている大人を「今」に連れ戻すみたいな話なんですよね。先を見るというのは、今を生きている人でないとできないじゃないですか。今に生きている人だから「先について」言えるのだと思います。

―鞍馬も「先を見る」イメージとして作り上げているのでしょうか?

松本監督

「三人議会」の三人で言うと「八瀬」が過去の担当で「鞍馬」が未来の担当で「明恵」が現在の担当だったんですよね。

―明恵については、未来でも過去でも生きたくない存在のように見えました。

松本監督

明恵は今からどこへも行けない人で、「コト」と「明恵」は二人で一人の主人公として考えていました。コトは過去から未来へ行くという前提で今の認識持っている人。明恵は、立ち止まって、今を生きているというよりも、今から動けないでいる人なんですよね。それで周りに流されています。なので、二人とも同じ「今」を担当していたんですけど、今の捉え方が違うんだと思います。

―京騒戯画では、実在する「明恵上人」と、それに関連するものにフォーカスを当てています。何故、明恵上人を作品に取り入れようと思ったのでしょうか?

松本監督

明恵上人をモチーフとして確かにお借りしてますし、仏眼仏母もお借りしてはいますが、あまり、実在している明恵上人と、作品内の明恵上人とを意識して合わせようとかはしていないです。自然に作品と合うところは合ったという感じです。
ただ、物語の構想の取っ掛かりを探している時に、「あるべきようわ」っていう言葉に印象的に表れていますが、明恵上人はすごく現代に通じる思想を持っていた人なんだなと興味が湧きました。今の人が見てもすごく共感できる部分があったり、古くならない思想を持っている人だなと感じて、取り入れました。

―京騒戯画は、「ある一家を巡る愛と再生の物語」と「家族」をテーマにしています。以前、ご自身が監督されたプリキュアの劇場版(『映画 ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?』)にも「家族」について言及している部分があります。松本監督が持つ「家族」のイメージとはどのようなものでしょうか?

松本監督

家族という単語は分かりやすいように使っているだけで、血のつながりなどというのはあまり意識していません。自分が生きていこうと思う上で、自分を肯定できるものというのは、自分の内側と外側にないと成り立たないと思うんですよ。外側から自分を肯定できるものを家族っていう名前につけて使っているんだと思います。

―父親像、母親像、両親像についてのイメージは?

松本監督

『京騒戯画』を例にすると、高山寺に最初に住んでいた古都様と明恵上人とあと薬師丸と、鞍馬、八瀬の5人いて、この5人は明恵上人という一人の人間の感情を分けているんです。あの家族が全員揃って一人の人間になるんです。なので、父親だから、父親に何か理想を持っているとか、母親に何か理想を持っているということは無いんです。

―『京騒戯画』を経て再び感じたアニメーション制作の魅力や、想いはありますか?

松本監督

集団作業だなということはやっぱり改めて感じました。私は商業アニメーションとして色々な人と一緒に作品を作るという方を選択しているので、周りにスタッフがいないと作れないんですよね。なのでスタッフのありがたさは今回すごく感じました。

後編に続く

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(文=圓谷英明)

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