フェイシャルセラピストかづきれいこ×インタビュー

2014年12月2日 記事の公開日時 5:00 pm

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フェイシャルセラピストかづきれいこ×インタビュー
 
 

かづきれいこ氏は、リハビリメイクを確立し、第一線で活躍するフェイシャルセラピストである。リハビリメイクとは、あざややけど跡など外見に損傷を負ってしまい、自分の外見に悩みを抱えている人が、その傷跡を受容し、社会復帰を目指すためのメイクのこと。いわば外見のリハビリテーションだ。外見は、人に大きな影響を与える。「美しいこと」が「いいこと」とされる傾向がある今の日本の風潮は、外見に悩みを抱える人に生きづらさを感じさせることも多いだろう。大学で教鞭を執るかづき氏。彼女の言葉から、誰もが関心のある「外見」について、もう一度考えてみよう。

―リハビリメイクを始めるまで

 私は生まれつき心臓に穴が開いていたため、冬になり寒くなると顔が真っ赤になっていたんです。そのせいで、いじめられたこともありました。高校時代、一度だけお化粧をして登校したことがありました。するとすぐに、先生から「化粧を取れ」と言われてしまって…。当時は化粧をして学校に行くことはタブーでした。でも、私にとってそのお化粧はおしゃれ目的ではなく、「赤い顔をカバーして、普通になるためのメイク」だったんです。「どうしていけないのだろう」と悲しくなりました。

顔が真っ赤になる冬は、まるで性格が別人のよう。気分が落ち込み、人が笑っているだけで「ああ、私の悪口を言ってるんじゃないかな」と思ってしまい、仲間に入れなかった。でも、夏になり顔色が良くなると積極的になってきて、みんなの輪に入っていけたんです。当時は今みたいにブログとかがないので、日記に「『顔じゃないよ、心だよ』なんて嘘だ!」と書いていました。
でも夏と冬の違いって、ただ顔が赤いか赤くないかだけだったんです。どうして夏と冬で、こんなに性格が変わってしまうんだろう、「顔ってなんだろうな」ということをずっと考えている子でした。

それで、私は「顔と心と体」の繋がりを考えたんです。「心と体」はよく聞くけど、なんで「顔」を入れないんだろうと思っていたんですね。「今日はなんとなく顔が変だな」って思ったら、誰にも会いたくなくて、一日嫌な気分だったりしませんか。そういう自分の経験がきっかけとなり、リハビリメイクを考案し、研究を始めていったのです。

―リハビリメイク確立にあたって

 私は、リハビリメイクを特別なメイクとして区別していません。自分自身がそうだったのですが、外見で悩んでいる方は「これは、気になるところをカバーするための特別な化粧品なんですよ」って言われると、あまり嬉しくないと思ったので、どんな人でも使えるような化粧品を開発しました。なので、リハビリメイクは、本当に特別なものじゃないんですよ。シミ、シワ、たるみが出始める30歳を超えたらみんな、リハビリメイクなんです。加齢によるシミやシワ、あざなどに違いはありません。
そういう誰でも使えるような最大公約数的な化粧品を作ること、そして誰でも若々しく元気な顔になれる化粧の方法を編み出していきましたね

―「リハビリメイク」に込められた思い

 メイクを教え始めた頃、やけどを負った女の子が看護師さんと一緒に来られました。彼女の顔には、大きなやけど跡が残っていました。担当の看護師さんが「先生、彼女の身体のリハビリは全部終わりました。でも、これまでと違った外見で、彼女はこれから暮らしていかなくてはなりません。彼女には身体だけでなく、 社会復帰のために外見のリハビリが必要だと思うのです」と おっしゃった時、私の中に「リハビリメイク」という名前が生まれたのです。
 欧米では、傷やあざを隠すための「カモフラージュメイク」がありました。「リハビリメイク」はカモフラージュする(隠す)のではなく、精神面も含めた社会復帰のためのメイクという意味を込めています。
 また、その当時、私自身も研究を始めたばかりということもあり、お金はいただいていませんでした。そうしたら、その彼女に「私の顔ってボランティアですか?」って言われたんですね。私はボランティアってすごく良いことだと思っていたのですが、「ボランティアだと、一回しか来れない。私のように困っている人がたくさんいるのに、先生が死んだら終わるでしょ。先生のやっていることは北海道から沖縄の人まで必要だから、リハビリメイクをできる人を増やしてください」って言われたんですよ。それを言われて衝撃を受けました。「ボランティアでやる」というのは、実は「やってあげている」っていう私たちサイドの自己満足だったことに気がついて、それから仕事にしようと思いました。

―リハビリメイクが目指すもの

 私が最終的に求めているものは何かと言うと、外見に悩みを抱える方に自分の顔を受け入れていただくことなんです。リハビリメイクでは、初回はあざや傷などの患部をしっかりカバーして「隠そうと思えばここまで隠せる」ということを見せます。

 「メイクでここまで綺麗になれるんだ」という風に、希望の光を見出せるようになると、その安心感から心が解放されて、素顔の自分も受け入れられるようになるんです。そうすると、ほとんどの人が素顔で来るんです。「先生、気にならなくなっちゃった」って。それが私のリハビリメイクの目指すところです。

 どんな人でも自分の顔や体を選んで生まれてくることはできないですよね。授かった自分の外見を忌み嫌い、人生を放棄してしまうのはもったいないことだと思います。今の社会って、美しいものが善で、醜いものは悪というメッセージが多いですよね。私は、外見ばかりを気にするのではなく、人を外見で判断してしまう危うさや、偏見で傷ついている人たちのことを、きちんと考えていく必要があると思っています。

 それから、不慮の出来事や病気などによって外見が変わってしまう可能性って、誰にでもありますよね。それなのに、「私には関係ない」と無関心なことが多いです。いざという時どうすればいいかという情報が世の中に行き渡って欲しい。みんなが関心を持てば、そういう情報も広がって行くと思います。そうすれば、何かあっても安心できますよね。

―かづき氏にとってのメイクとは

 昔から絵を描くことが好きだったのですが「顔は画用紙で、化粧品は絵の具みたいなものだな」とずっと思っていました。絵の具をたくさん持っていても、すぐに良い絵が描けるわけではないですよね。上手な絵を描こうと思ったら練習が必要。それと一緒で、たくさんの化粧品を使うことではなくて、それをどう使うかということを考えています。

 なので、私は多くの化粧品を使って「お洒落できれいになれるメイク」をするよりも、化粧品を上手に使って「心が元気になって、だれでも明るく若々しくなれるメイク」をすることを目指しています。「美しい」「キレイ」の価値観は、一人一人の主観や、時代の流れに大きく左右されます。例えば、平安時代の美人は、ふっくらとした下ぶくれの顔と細い目の女性で、今のように「痩せたい!」という願望が出始めたのは、おそらくせいぜい40年前にすぎません。10年前と今とでは、流行のファッションも全然違いますよね。流行のメイクをただ追いかけるのではなく、自分自身が満足できて、その顔になることで前向きに元気になれるようなメイクが大事だと思っています。メイクによって、心も元気になり、自信と希望が生まれ、ポジティブに行動できるようになります。

―学生に向けての一言

 若い学生さんには、ただ真面目にやるということだけは覚えていて欲しいです。私は仕事に関しては真面目で、横道に逸れなかった。これだけは人に言える自慢かな。常に相手のことを思い「どうしたら良くなるか」ということばかり考えていました。

 女の人は結婚ばかりにとらわれずに、自分でやりがいを見つけて、社会に適応できることをやってみたほうが、40代、50代になったときに生きていて良かったなと思える瞬間に出会えるのではないでしょうか。自分を大切にして、人に尽くす。それが一番理想です。私の場合、「うれしい」とか「元気になった」って言ってくれる人の笑顔が一番の栄養になるし、アンチエイジングになりますね。

 そして、色々なことが悩みから出てくることもあると思います。自分の思ってることをSNSに書く時って、無意識に見せたい自分を演出してしまうと思うんです。そういうのではなくて、鍵のかけれる日記帳に自分の正直な気持ちを書くといいですよ。

 最後に、思ったらやってみることが大事。何か思いついたらすぐにやって、失敗したら戻って他の方法を試す。みんな、「私はこの道何十年です」って言いますけど、それだけやってるわけじゃないですよ。色々なことをやっているんです。何でもいいから興味があることをやって、向いていなかったらすぐやめたらいい。色々なことをやらないと、向き不向きも分からないから
       

プロフィール

フェイシャルセラピスト。REIKO KAZKI主宰。

医療機関と連携し、傷痕ややけど痕などのカバーや、それに伴う心のケアを行う“リハビリメイク”の第一人者。
 生まれつき心臓に穴が開いていたため(ASD)、冬になると「顔が真っ赤」になる悩みを持っていたが、30歳の時にそれが分かり手術し、完治。その後、メイクを学び、リハビリメイクを通じて、「外見」の問題に様々な手法で取り組むフェイシャルセラピストとして活動するようになる。また、老人ホームなどへのメイクボランティアも精力的に行っている。

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