「人科生こそ、人科とはなにかと自問すべき」不確実な未来を迎える人間科学部生の生存戦略<前編>

2015年7月22日 記事の公開日時 6:30 pm

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「人科生こそ、人科とはなにかと自問すべき」不確実な未来を迎える人間科学部生の生存戦略<前編>
 
 

人間科学部生のみなさんは、「人科ってなに?」と聞かれた時にどう答えるでしょうか。人科とは一体何なのか。これからの社会で、どのように活きるのでしょうか。

今回は人間科学部OBの細野雄紀氏に、人間科学部について、そしてこれからの日本社会での「生き方」についてお話を伺いました。

デザインと人間科学の意外な関係

人間科学は、人間を科学するから人間科学なんですけれど、言い換えれば人間を中心に物事を解き明かしていく過程で、最終的に「人間とは何か」を考えるってことなのかなと思っています。まずこの、人間を中心に据える考え方自体がとても大切なのだと思っていて。

例えば、デザインやものづくりをする上では、人間中心に考える視点は不可欠なんです。人間を解きほぐさないと、人間にとって価値あるものを生み出せるわけがありません。

デザインする対象が何であっても例外なく、デザインするものを人間に対していかに「最適化」させるかが「デザイン」なのだと思っています。

こう言うと簡単ですが、実際には人間という生き物は本当に複雑でよく分かりません。私と同じような人間なんてこの世にいないわけですし、私自身も1日寝て起きればまるで別人のように考え方や行動が変わってしまいます。皆さんも1日経ったら気分が変わった経験はあると思います。人間という生き物がいかに「読めない」かが分かります。

だからこそ、この掴みどころがない「人間」って一体なんなんだろう、と考え続ける必要があるんですよね。

例えば友達を誰かに紹介するとき、その友達をどのように表現してみるか。性格、外見、考え方など…色んな側面から友達と自分の違いは見つかりますし、それぞれ特徴もあります。違いもあれば、同時に共通しているものも見いだせる。やってみて欲しいんですが、道をすれ違う人を観察してみて、自分の想像していなかった行動に「なぜ」と問いかけてみて欲しいです。

なぜ、あの人は派手なシャツを着ているのだろう。なぜ、この人は早歩きなのだろう。

それぞれの思考や行動から見え透ける何かに、興味を持って考えてみることが大事なのかもしれません。

人間科学的アプローチによるデザイン思考

そういう、他人の行動とか特徴を解きほぐして考えてあげること…つまり「観察」することがデザインをする上でも重要なのだと思います。

つまり、人間中心に物事を探求すること自体が、とてもデザイン的なのです。

私は普段、ITベンチャーでiPhoneアプリやニュースエンジンを開発しています。もちろん、決められた何かを作るわけではなく、何を作るべきかをも検討課題として取り組まなければなりません。その際に最適な尺度とは何なのかと、いつも頭を悩ませてしまいます。正解はないので、自分たちなりに何を重視して作るべきかを熟考します。

モノづくりに臨む際、当たりまえながら「魅力的なもの」を作りたいと考えるけれど、その「魅力的なもの」が何なのかが分かれば話は容易く片付きます。でも、多くの場合、簡単にはその尺度は繊細で分かりにくいものです。

なぜなら、魅力を感じる主体こそ人間なのであって、すべては「人間にとってどう価値をもたらすか」に委ねられているためです。価値と一口に言っても複雑で、人間の取り巻く環境や状況が変われば簡単に上下に変動するので、人間にとって価値あるものを探ることも同様に難しいのです。

逆説的ではありますが、だからこそ、人間科学という学問領域が成立するのだと思います。

人間を深く理解することによって、初めてその人にとって価値があるものが見えてきます。

そう考えると、人間科学的なアプローチは、ものづくりの思想、つまり何もないところから0→1を創造する考え方に通じているのではないでしょうか。

人科生こそ『人科とはなにか』と自問自答すべき

人間科学部には、「情報」「健康福祉」「環境」の3学科があります。それぞれが織りなす最終ゴールこそ「人間」の追求にあるのだと理解していて。いろんな視野から学際的に解き明かしていこう、っていうのはすごくいいなと思います。

ものづくりだけでなく、「人間とはなにか」というクエスチョンは一人一人の人間がより良く生きるための羅針盤であるべきなんです。人科は、日本の大学では珍しくリベラルアーツ的で学べる領域自体が面白いですよね。こういう学問をできる場所って日本には少ないのですが、一方でこれからの時代には絶対に必要な視座になります。

いまだ日本の多くの学生はタコツボ型で、時代に合っていません。専門的な学問に閉じたっきりで、いくつかの領域を横断的に渡り歩くスキルに乏しいわけです。それに比べると、不確実な未来に備えるという意味で、人科のアプローチは未来的なのではないでしょうか。

こういう優位性を、人科生こそ認識しなければなりません。

不確実な未来を生き抜くスキル

本来は、人科生が勉強していることはこれからの社会では必ず役立つはずなんですが、人科生がそれをあまり理解できていないのは勿体ないことです。正直、自分も学生のことはよく分かっていませんでしたが、「人科とはなにか」を理解しないと、その恩恵を感じられないどころか、せっかくの武器を無駄にしてしまうことになりかねません。

そもそも、人間にフォーカスしないと自分自身のことなんて理解できるわけがありません。ここを勘違いする人はとても多いのですが、ほとんどの人は自分自身のことを全然理解できていないわけです。普段、いかに考え行動し、そしてどれだけ環境に支配されているのか。それを客観的に理解できれば自分自身の特徴が見えてくるし、最終的にビジョンをも獲得できるのだと思います。

これからの社会を考えても、よりその重要性は際立って感じます。昔から、日本人はマニュアル志向で決められた計画のなかで能力を発揮するのは得意だと言われますが、これからはそれが通用しない社会に突入してしまいます。

この不確実な未来を生き抜くためにも、「人科とは何なのか」をきちんと知ることで、はじめてその武器を正しく扱えるようになるのではないでしょうか。

誰にも将来のことは分かりませんが、そのときに人科の学問領域が羅針盤になればいいですね。

後編はこちら

細野雄紀(ほその ゆうき)

1990年2月8日生まれ。神奈川県平塚市出身。株式会社JX通信社取締役兼COO。2012年、早稲田大学人間科学部人間情報科学科を卒業。尾澤研究室1期。「MagNet Press」では主に誌面デザインを担当していた。JX通信社では経営メンバーとして幅広い業務に従事。

Twitter: @healthyboy5

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