偏差値ってなんだ!?

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2016年2月29日 記事の公開日時 8:00 am

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偏差値ってなんだ!?
 
 

この記事は2016冬号に掲載されています。
詳しくはこちらをご覧ください。

数値が「あらわす」もの、そして「あらわし」方

 受験時代に誰もが避けて通れない数値、偏差値。50が平均であるということは漠然と知っていても、その数値が何を表しているのか、なぜこれで成績や志望校が判定できるのかと疑問に思っていた人は多いだろう。偏差値より実際の点数を見た方がいいのではと疑問に思ったマグ捜査員(真面目に顔面偏差値を求めようとした)は統計的な観点からこの謎を解明すべく早稲田大学の中村健太郎先生にお話を伺った。

まず偏差値とは何なのか、また平均との違いは何なのだろうか。

「まず、平均は皆さんが良く知っている平均気温とか平均株価などのように、日常的に使われるデータをまとめる指標です。全体のデータを足し合わせて、足した個数で割ることで求められます。一方、偏差値というのは、ある特定の値が平均と比べて大きいのか小さいのか解釈したいような場合に使われる指標です。例えば5教科のテストを受けて、自分が文系、理系どちらの科目が得意なんだろうと思った時に、5教科の点数そのままだと上手くいかない部分があるので、それを上手く比較できるようにしたのが偏差値といえます。具体的には、点数から平均を引いて、散らばりの大きさで割ることで求めることができ、データの散らばりの大小を点に反映させているのです」(中村健太郎先生)

偏差値には散らばりが関係する、ということのようだが、そもそも散らばりとは何を意味するのだろう。

「例えば数学のテストはすごく良くできた人もできなかった人もいて、国語は平均点ぐらいに集中してるとすると、二つのテストの性質は異なります。偏差値は他の人と比べるのがポイントなので、他の人たちの得点がどうであるかっていうことにダイレクトに依存しているんです。ですから、その集団の中での位置づけはわかるのですが、別の集団の中での比較はできません。つまり他の人たちがどのくらいの学力を持っているかということに左右されてしまうんです。そういう意味で偏差値というのは基準にしている集団が変わってしまうと比較することができないという弱点があります」(同)

なるほど、偏差値はあくまで同一の集団内での位置づけは分かるが、集団が変わってしまうと比較が困難になってしまうのか。
では偏差値はテストにしか用いられない指標なのだろうか。

「偏差値は企業のブランドの評価に使われることもあります。ブランド価値を評価するいくつかの質問があって、それを集計する形で得点化し、偏差値化して利用されています。しかし、一般には一部のすごい企業がいい点をとるので、偏差値が簡単に90になってしまうこともあります」(同)

意外にも偏差値はテストだけでなく、企業のブランド評価にも使われるのか。
しかし、調査によっては簡単に高得点を出してしまうこともある偏差値は役に立たないのではないだろうか。

「もちろんどういうところがどのくらいの規模で行った調査なのかを知ることも大事ですが、偏差値自体は複数の人から集めたデータで個々のデータを位置づけるということをしているので、指標としては便利なものです。ですから、点数の分布の形には注意が必要ですが、必要以上に疑ってかかる必要はないと思います」(同)

先ほど数字で測れないものを数値化する、という話が出てきたが、数字で測れないものを測ろうとするのは興味深い。では最後に、数値化して判断されるものについて伺ってみよう。

「数値化して判断されるものの例として、就職する際に受ける適性検査があります。適性は身長や体重のように決まった物差しで測れないので、企業はコンピュータを用いて試験をします。ここでは難しさがわかっている問題を用意しておいて、その問題が解けるか解けないかでその人の適性を測っています。例えば、この人は難易度が4の問題はできたけど5はできない。そうするとこの人はレベルが4くらいの適性を持っていると判定できる。この方式の優れた点は、偏差値と違って、決まった集団に依らずに適性を数値化できることです。偏差値は試験を受けた集団とその媒体(ここでいう試験問題)に依存するので、集団や問題が大きく変わると指標としては役に立たなくなります。一方、就職試験に使われる適性検査のような方式は集団にも媒体にも依存しないので、偏差値より一歩進んだ表し方といえますね」(同)

なるほど、偏差値の有用性とその利用、弱点、そしてその弱点を克服した現在の表現方式について知ることができた。
私たちは日々数値や指標に晒されながら生きていくであろう。しかしそれらに翻弄されるのではなく、何を表したものか、何を用いて表したものかを気にするだけで、有益な数値ライフを送っていけるに違いない。

(文=千代島豪輝)

中村健太郎(NAKAMURA KENTAROU)
早稲田大学人間科学部准教授。専門は、統計学的なアプローチによって,人間行動や心理に関わるデータから科学的に知見を導くための方法論。特に,学力や適性などの直接的にものさしで測ることができない心理的特性について,推測方法の性質を検討し,手法の改良や開発を行って実際のデータに適用することを課題としている。

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