ソーシャルワークから考える「支援」の在り方とは?

2016年3月4日 記事の公開日時 5:00 pm

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ソーシャルワークから考える「支援」の在り方とは?
 
 

この記事は2016冬号に掲載されています。
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「無知の姿勢」という新しい「専門性」の在り方

 
皆さんは「支援」と聞くとどのようなイメージが思い浮かぶだろうか?様々な「支援」の形として、学校では不登校児への支援、福祉では高齢者や障害者への支援などがある。しかし、それでもなおいじめによる自殺や高齢者の虐待が後を立たない。そこで、今回はナラティブアプローチをご専門とし、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーとしてもご活躍の駒澤大学の荒井浩道先生にソーシャルワークから見る「支援」の在り方を伺った。

まず、荒井先生に「ソーシャルワーク」の言葉の意味について伺った。

「ソーシャルワークはそれぞれの分野により捉え方が様々ですから一言で表すのは難しいです。ですから、カウンセリングとの対比で考えるといいかもしれません。例えば、スクールカウンセラーというのは、文字通りカウンセリングをする。スクールソーシャルワーカーはスクールカウンセラーができない仕事、具体的には、家庭訪問をするのです。不登校の生徒の家庭を訪問し、家庭により異なる事情を把握する。家庭で虐待等を発見すれば、相応の施設につなげていきます。また、ソーシャルという点が重要で、視点が社会に行くというところがカウンセリングと大きく違うと思います」(荒井浩道先生)

つまり、問題を社会的文脈で捉え、被支援者を様々な社会資源につなげることがソーシャルワークである。では、先生は学校という領域で2つの専門職を担うなかで、何か気づきがあったのか伺った。

「日本の制度上はカウンセラーとソーシャルワーカーは違います。カウンセラーには臨床心理士の資格があり、ソーシャルワーカーには社会福祉士の資格があります。資格としては違いますが、私は業務としてはどう違うのか、視点はどう変わっていくのか、ということに研究関心があります。実際にカウンセラーの定義とソーシャルワーカーの定義の半分くらいはかぶっているんですね。実際私は臨床心理士の資格は持っていないのですが、スクールカウンセラーとしての業務は一応できています。そう考えると、なぜできるのか、専門性とは何かということを考えますね。専門性を持つということは排他的になりやすく、むしろ専門外だからこそできる支援というのもあります」(同)

なるほど、専門性とは考えさせられる概念である。では、「支援」には必ず専門性は必要なのだろうか。荒井先生のご経験から考える「支援」の在り方について伺った。

「実は私、一時期ソーシャルワークや福祉が嫌になってしまった時期がありました。なぜなら、ソーシャルワークとは何だろう、自分は専門性を振りかざして上から目線な支援をしてるんじゃないかと思ったからです。そのように自分の在り方に悩んでいる時に、ピアサポートという考え方に出会いました。ピアサポートとは同じ状況におかれた人同士のサポートのことで、例えばガン患者同士での支え合いや介護疲れの若者たちの支え合いのことなどを指します。私は最初、認知症の家族会に参加したのですが、そこでは嘘のない、本物の支援が行われているように見えたのです。ですから、私はその後10年来、ピアサポートについて研究しています。そして、そのピアサポートについて学んできた中で出てきたのがナラティブアプローチです」(同)

高い専門性を持つ荒井先生が見つけた本物の支援とは、皮肉なことに専門性を持たない人同士の助け合い、ピアサポートだったのである。それでは、ナラティブアプローチにはどのような特徴があるのだろうか?

「ナラティブアプローチの特徴として『外在化』があります。外在化は自分と問題を切り離すことです。簡単に言えば、妖怪ウォッチが良い例で、忘れ物をしてしまう男の子がいて、忘れ物を妖怪のせいにしてしまう。そうすることで自分の体から問題を外に出すことができ、自分を客観的に見ることができる。また倒そうとするのは妖怪で、自分ではないので、自分を責めることにはならない。さらに、この妖怪をどう倒そうかと相談し、最終的には問題を克服でき、妖怪とも仲良くできます」(同)

ナラティブアプローチは専門用語によらない、当事者の当事者による理解を促す方法である。つまりナラティブアプローチの存在意義は、私はあなたのことを全く知らないから教えて欲しいという「無知の姿勢」から始まり、対等な関係で相手を理解していくという点と、体系的な技法が確立されていないという点。つまり、ナラティブアプローチに求められるのは技法ではなく「その人のいい所を見抜く視点を持っているか」である。

では、最後に、ナラティブアプローチを一言で「あらわす」と?

「『新しい専門性』です。専門資格を取ったからには意味があり、『無知の姿勢』という新しい専門性を伝えていきたいです」(同)

(文=鈴木大介)

荒井浩道(Arai HIROMICHI)
駒澤大学文学部教授。また東京都公立学校スクールカウンセラー、泉龍寺副住職等を兼務している。専門はソーシャルワーク方法論。主な著書に、『ナラティヴ・ソーシャルワーク“〈支援〉しない支援”の方法』(2014年 新泉社 単著)などがある。日本老年社会科学会奨励賞受賞(2012年)。

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